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J1 VisaによるNRのStatusが4年まで延長される件について、税制解説及び弊社の見解をお伝えします。

ご注意:Tax Filingは個人個人違いますので、以下は、大概的な見解でありますので、すべての方には当てはまらない場合があります。本記述をもとにTax Filingをされた場合、弊社では、結果についての責任は負いません。又、今後、お客様の実際のTax Filingに於いて、本件を再度調査した場合、弊社の見解が変わることがあります。以上、よろしくご理解の程お願いします。   06/23/2023

ポスドクのJ1 Visaの方の場合、最初の2年は”Exempt Individual”という立場になります。

留意いただきたいのは、このExemptは免税・免税という意味ではありません。Filing Statusの判断をするときのテストの一つの”Substantial Presence Test”からの免除、という意味です。

Substantial Presence Testは、滞在日数を数えて、その日数により、Residentなのか、Non Residentなのかを決定するものです。過去2年を含む日数を数える計算がありますが、ここでは、簡略して、年間183日以上身柄が米国にある場合、税制上のResidentとなります。但し、移民法でのResidentとは別です。

しかしながら、J1、F1 Visaで入国された方は、上記の日数を数えるSubstantial Presence Testが適用されず、通常J1であれば、入国年を含むCalender Yearの2年、F1の方は5年は、日数を数えない”Exempt Individual”となり、通常、Non-Residentというファイリングステータスとなります。

Non-ResidentがUS Tax Filingにて申告するものはアメリカ源泉の報酬、収入、給与、Stipend」となり、日本で発生した収入はNon Residentの収入としての申告をしません。例えば夏に日本に帰国し、講演をした場合の謝礼はNRの立場では、申告はしなくてよろしいかと思います。(ただし日本では申告の必要があると思います。)

一方、アメリカから日本へリモートで、講義をした場合は、住んでいるアメリカで発生した収入ですので、申告義務が発生します。アメリカの大学からのお給料、Stipend、アメリカの銀行、投資会社からの利息収入、配当収入もアメリカへ申告する収入となります。

気を付けていただきたいのは、ポスドクJ1最初の2年はすべての収入が「非課税」「免除」「免税」とはなりません。収入の源泉と内容により、Non Residentとして申告する項目が発生することが十分あります。

また、日米租税条約20条による2年の免税は、すでに廃止されています。 今はない租税条約の2年とJ1 の最初の2年=NRと混同しないようにお気を付けください。

さて、本題の「J1 Visa4年Non Resident」についてです。

すべての報酬、給料が米国外発生である場合、NRの立場を4年まで延長できる、NRのままでいられる、という特例があります。以下が特例を示した税制(Tax Code)です。

Tax Code Section 7701(b)(5)(E)(i)   (​左がTax Code全体のリンクです。該当項目はだいぶ下の方にあります。)
 

(E)Special rules for teachers, trainees, and students (ポスドクの方は”Teacher”として記載されます。)
(i)Limitation on teachers and trainees

An individual shall not be treated as an exempt individual by reason of clause (ii) of subparagraph (A) for the current year if, for any 2 calendar years during the preceding 6 calendar years, such person was an exempt person under clause (ii) or (iii) of subparagraph (A).
In the case of an individual all of whose compensation is described in section 872(b)(3)*後述, the preceding sentence shall be applied by substituting “4 calendar years” for “2 calendar years”.

紛らわしい書き方になっています。簡略しますと、ポスドク(Teacher)の方は、2年をこえてExempt Individualであり続けることはない。ただし、すべての報酬・給料がSection 872(b)(3)に記載されているものであれば、Exempt Individualの立場が4年まで継続することができる。

Section 872(b)(3) 

 (b)Exclusions *収入から除外される項目*

(3)Compensation of participants in certain exchange or training programs (*J1はExchange Programです。)
Compensation paid by a foreign employer to a nonresident alien individual for the period he is temporarily present in the United States as a nonimmigrant under subparagraph (F), (J), or (Q) of section 101(a)(15) of the Immigration and Nationality Act, as amended. For pur
poses of this paragraph, the term “foreign employer” means—

J1 Visa 3年目のジレンマ

J1 Visaのカレンダー3年目に於いて、Filing StatusがResidentなのかNon Residentを見極める為に、収入の内容を吟味する必要があります。

ここで注目いただきたいのは、上記のTax Codeにあるall of whose compensation”、”Compensation paid by a foreign employer”という言葉です。Compensationは報酬、お給料という意味です。Stipend/Fellowship

とは違います。

 

従って:

 

  • アメリカの大学からお給料をもらった場合、”All of compensation paid by a foreign employer”は成就しません。従って、J1 VisaによるNRのステータスは、2年で終了し、Residentとなります。
     

  • 学振からStipend/Fellowshipを受け取られている場合、学振からのStipendは”Compensation”(お給料)ではありません。研究者の方で、学振との雇用関係がある方は現在のところ存じ上げておりません。お給料とは、支給する会社・団体が研究者の研究から利益を受け取る対価であります。しかし、Stipendは、研究者の生活のサポートを目的としており、学振が何らかの利益を受けてはいないはずです。従って、上記の”All of compensation paid by a foreign employer”は当てはまりません。結果、4年のNRとはなりません。3年目からはResidentとしてファイルします。学振からのStipendへは、課税されます。
     

  • 米国に滞在中、リモートで、日本に向けて講義をした、という場合ですが、お給料を受け取られている大学からの業務としての報酬をもらわない限り、理論上、米国で発生する個人の「収入」「報酬」=Compensationとなると考えられますので、4年NRの実現は難しいのでは、と思います。

 

  • 注意:学振からの収入の扱いは、同業者でも異なるかもしれません。弊社では、IRS Memorandam, Court Caseを調査した結果、学振からのStipendは”Compensation from a foreign employer”ではない、という立場をとっております。

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例をあげてみましょう。

日本の東帝大学病院が、大門未知子医師を、J1ヴィザで、アメリカのトランプ病院に派遣し、2年がたちました。大門先生は、 東帝大学病院の従業員のままです。トランプ病院にて、遠隔ロボット術式研究をします。この場合、 東帝大学病院が大門先生のお給料を出し、日本で源泉徴収と社会保険料を払います。トランプ病院の方は何も払わない、といううれしい状態です。 東帝大学病院は大門先生が取得したロボットによる術式を使い宣伝効果として、 東帝大学病院 の名声を高めることができました。大門先生はNon-Residentの状態で、4年まで延長、アメリカのタックスファイルでは、日本からのお給料には課税されません。日本では、課税だと思いますが。

 

一方、神原紹介所の神原晶は、今までかすめ取っていたお金を銭湯の下駄箱に貯めておいた。その資金をStipendとして、大門未知子医師をアメリカのMayo Clinicに派遣。Stipendは、生活費として、日当ベースで計算され、大門先生が経済的困窮に陥らず、研究ができるようにお金を送った。大門先生が習得した遠隔ロボット術式は、アメリカから大門先生が操作し、日本の過疎地に住む多くのご老人たちの治療の為に使われた。神原氏は、その様子を喜んでみているだけであった。この奨学金には、アメリカで課税されると思います。大門先生は3年目に入り、アメリカのタックスではResidentとしてファイルし、このStipendを収入として申告した。

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J1における最初の2年(または4年)の間、アメリカではNon Residentですので、当然日本では、居住者となると思います。その場合、アメリカで発生した収入を含めた日本での申告、納税、源泉徴収は行われるべきではないかと思います。強い言葉になってしまいますが、”Tax Evasion”という悪く言えば「犯罪」にならぬように、まず、日本の税理士、国税局、税務署にお尋ねください。(租税条約20条が撤廃された理由は、研究者だけに2年も非課税扱いの不平等性が長年指摘されていたからです。)

​最後に、日本で住民票を抜いて米国に来られても、日本の税制では非居住者として自動的に扱われないはずである。国税局のWebsiteによれば、Case by Caseである。従って、日本に住んでいなくとも、日本で確定申告は可能であるはずである。詳しくは、日本の税理士にお尋ねください。

(2023年6月時点弊社記事)

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