Our Service 国際税制業務
アメリカ国外にある銀行・投資口座等の開示申告
「FBAR」という言葉を聞いたことがあると思います。FBAR申請をしないと高額罰金を払わなければならない、身近な人で罰金を払った、というホラーストーリーお話を耳にされている方も多いと思います。また、ファイルをしていない方もいらっしゃると思います。
更に、似たようなファイリングをするForm 8938、新しい法律のFATCAという法律もお耳にされ、混乱している方がいらっしゃると思います。
Tax Nihongoでは、日本を含め、世界各国からのお客様の金融口座開示のファイル
を手掛けてきています。
下記は、FBAR,Form 8938のファイリングの概要です。実際に案件を引き受けさせていただく場合には、お客様それぞれの状況に合わて検討を行い、必要とあれば更なるリサーチを行った上でのタックスファイリングとなります。
本Websiteを参考にしてご自分でファイリングされる方に対しては、弊社は責任を負いませんので、ご注意ください。必ず、IRSとTreasuryのWebsite,FormのInstructionを読まれて自己責任に於いてファイルしてください。
FBAR | Report of Foreign Bank and Financial Accounts
<FinCen114>
*まず初めに申し上げます。
FBARは米国外の金融口座の最高残高の情報申請です。残高に課税はされません。
FBARの概要を先に読みたい方はスクロールダウンして、FBARの概要に行ってください。
FBARの歴史―なぜ
FBARは古くはTD F 90-22.1、現在はFinCEN Form 114というフォームを使ってファイリングします。
FBARとは”Foreign Bank and Financial Accounts"の短縮された言葉です。1970年に米国の法律のTitle 31(Money &Finance)下のBank Secrecy Act(銀行秘密法)により制定されました。Money Launderingの国際犯罪などをを取り締まる目的で、開示申請と記録保持が義務付けられています。管轄はTreasury Departmentです。
一方、IRSはTreasury Departmentの下でにある組織ですが、Title 31(銀行秘密法)ではなく、Title 26(税制)のみを管理する部門です。
しかし、2001年のUS Patriot Actをきっかけに、2003年に、Treasury DepartmentはIRSへ、FBARの「執行権限と調査権限」を与えています。ここでIRSはTitle 31(Money&Finance)下のBank Secrecy Actと本来のTitle 26(税制)の異なる法律の元で動くことになりました。
FBARのファイリングは、Tax Softwareに質問事項がかなり以前より記載されています。それにも関わらず、アメリカ一般の納税者は、海外での資産は持っていない方が多数派ですので、 大手のTax Office, CPA、さらにはLocal IRS Officeでも正しい情報をもっていなかったのが事実でした。International Tax関連は、どうしてもマイノリティー扱いを逃れず、Tax Filing中にFBARのことを説明しなかったり、敢えて無視され続けてきました。
2011年より規制強化が行われ、FBARは一般にも広く知れ渡るようになりました。このあたりから、海外の米国税制納税者と海外資産を有する在米納税者の間でFBARの話題が持ち上げられるようになりました。
更に、2011-2012年度からは、IRS(Title 26 下)で類似した情報を申告するForm 8938の提出が求められるようになりました。Form8938については後述しますが、申告に必要な海外金融資産の低限がFBARより高くなっています。
FBAR不履行による裁判は以前からありましたが、2011-2012年あたりから、罰金を課せられた人、関連の裁判が海外金融資産を持つ納税者の間で話題になってきました。それは、2010年に施行されたFATCAという法律ができたためです。(子術)
最新情報として、2017年の申請時期から、FBAR提出期限が従来の6月30日からTaxと同様の4月15日に繰り上げられることになりました。2013年7月より、書面によるファイリングは一部例外を除いて停止となり、BSA E-filing SystemよりE-fileします。10月15日まで延長申請できます。改定申請(Amendment) は可能です。
尚、過去数年ファイルしていなかった方はどのようにしたらよいのでしょうか?
Streamlined Offshore Procedure, Voluntary Offshore Disclosure Program等があります。こちらをご覧ください。
FBAR申請義務の概要
(1)個人:米国市民・米国永住権保持者・税制上の米国居住者(Resident)・US Territory在住居住者
(2)法人:米国Partnership, 米国Corporation, 米国Estate,米国Trust
(3)上記(1)(2)で、米国外の金融資産口座の合計が一時でもUS$10,000(日本円で約百万円前後) を超える場合。
例:口座A $5
口座B $6,000
口座C $5,000
合計 $11,005 →口座A,B,Cすべて申告する。
(4)申請する米国外金融口座
銀行口座
投資口座
掛け捨てでなく払戻金がある保険・生命保険
個人年金など(厚生年金、国民年金は申請不要)
ご本人名義ではなくともサイン・捺印で引き出す権限が付随する金融資産
例:海外法人の役員で資産引き出しができる人
お子様名義の口座があり、そのお金を動かせる人、など
米国金融機関の海外支店にある口座(Citibankなど)
その他
*政府が運営する社会保障的年金(日本の厚生年金、国民年金)は申請不要
ご注意:
保険、生命保険、個人年金の申告に使う金額は、それぞれの機関にお問い合わせください。「解約した場合の払い戻し金」とお尋ねください。
弊社では、計算いたしません。
今までお支払いになった月々の保険料、年金を払った年数で掛けるという方法もあると思いますが、保険会社、個人年金を扱っている会社の手数料が取られる為、正しい残高の金額とはなりません。お客様にとっては、時間がかかる作業となります。
本件、弊社では、お客様から頂いた数字のみを使います。
(5)米国内でご収入のない方でも海外金融資産がある場合、申請が必要。
(6)タックスを夫婦合算でファイルしても、夫婦それぞれにてFBARの申請が必要。
(7)お子様の名前の口座がFBARファイルの条件を満たす場合は、お子様個人のお名前でFBARのファイルの必要がある。
同時に親御さんが、お子様の口座を管理している場合は、Signature Authorityとして親御さんの下でファイルする。
(8)ファイル有効期限(Statute of Limitation): 該当者は6年まで遡りファイルの必要あり
(9)Tax Form Schedule Bへの記載
個人申請のフォームの一つで利息収入、配当収入を報告するSchedule BへのすべてのPartへの記載が必要。
Part I は利息収入を記載。Part IIは配当収入を記載する。
利息収入、配当収入が無い場合でも、Part IIIに、米国外金融資産があることを申告する。
(10)罰則規定
(個人に関してのみ。法人に関する情報は割愛)
FBAR非準拠への罰則は、過失(Negligence/Non-Willful)と故意(Willful)では大きく違います。
過失を未申請者が証明できる場合には民事罰(Civil Penalty)
故意であることをIRSが確証した場合には、刑事罰(Criminal Penalty)が課せられます。
民事罰(Civil Penalty)
・一件につきUS$10,000 まで、または全口座残高総計の50%で$10,000が上限
・複数年の未申請についてはケースバイケースである。
・各年それぞれにペナルティーを課すのではなく、そのうちの一年を選択してペナルティーを課す場合と、
・一年ごと各口座ごとのペナルティーがかかる場合もある。
・IRS・TreasryのFBAR検査官とFBAROfficeの裁量により判断される。
・2022年現在、二つの法廷で、ペナルティーは、一口座につき$10,000なのか、一年につき$10,000なのか、
という大きく異なる判断がある。法廷の行方をみまもります。
->一年(一回)のFBAR Reportに付き$10,000の罰金という最高裁の判決が2/28/2023に下された。
The U.S. Supreme Court held Tuesday in a 5-4 decision that the $10,000 penalty for a nonwillful failure to
file a Report of Foreign Bank and Financial Accounts (FBAR) for foreign accounts accrues per report, not per account (Bittner, No. 21-1195 (U.S. 2/28/23)).
刑事罰(Criminal Penalty)
・FBARに関して、故意に開示・記録保持を行わなかった場合
・一件につきUS$100,000又は口座金額の50%のいづれか高いほうの罰金
・その他の刑事罰
ご参考:IRSマニュアル(英語)
Form 8938 | Statement of Specified Foreign Financial Assets (FATCA)
***2024 速報***今までは、Form 8938(FATCA)準拠に関してはあまりAuditを見てきませんでした。
2022年のInflation Reduction Actによる80ビリオンの予算追加により、Form 8938へのPenalty Push が増えてくるのではないか、という消息筋の情報が入っています。
*Form 8938もFBARと同様に残高には課税されません。該当口座からの利息収入、配当金には課税されます。
該当される方は、FBARに加えて、確定申告書にForm 8938を添付して米国外金融資産情報をIRSに報告しなければなりません。Form 8938はFBARと似ていますが、管轄の法律がTitle 26の税制となります。また、開示する内容も多少異なります。
FFBARは残高の開示のみですが、Form 8938では、海外金融資産からの利子収入、配当金収入、キャピタルゲイン収入などを報告します。適用される法律がTitle 26(税制) で、アメリカ政府の税金収入を目的としていますので、これだけの残高があるのなら、それなりの利子配当がある筈で、そこに課税する、という意図が伺えます。尚、延長申請は可能です。また、過去3年に遡り修正申請も可能です。
Form 8938申請義務の概要
(1)個人:米国市民・米国永住権保持者・税制上の米国居住者(Resident)・一部の非居住者(Non-Resident)
(2)米国外の金融資産口座の合計が下記の金額を超えるかた
海外在住者 年末の残高 | 年間の最高残高
未婚のかた (Unmarried) $200,000 | $300,000
夫婦合算 (Married Jointly) $400,000 | $600,000
夫婦別(Married Separately) $50,000 | $75,000
米国内在住者 年末の残高 | 年間の最高残高
未婚のかた (Unmarried) $50,000 | $75,000
夫婦合算 (Married Jointly) $100,000 | $150,000
夫婦別(Married Separately) $50,000 | $75,000
(3)申請する米国外金融口座
銀行口座
投資口座
掛け捨てでなく払戻金がある保険・生命保険など
個人年金・企業年金口座
ヘッジファンド・Private Equity Fund(未公開株ファンド)
口座外にある金融資産(例えばお手元にある株券など)
*政府が運営する社会保障的年金(日本の厚生年金、国民年金)は申請不要
ご注意:
保険、生命保険、個人年金の申告に使う金額は、それぞれの機関にお問い合わせください。「解約した場合の払い戻し金」とお尋ねください。
弊社では、計算いたしません。
今までお支払いになった月々の保険料、年金を払った年数で掛けるという方法もあると思いますが、保険会社、個人年金を扱っている会社の手数料が取られる為、正しい残高の金額とはなりません。お客様にとっては、時間がかかる作業となります。
本件、弊社では、お客様から頂いた数字のみを使います。
(4)夫婦合算であれば、夫婦個別にファイルの必要はなく、夫婦合算のまま申請する。
(5)ファイル有効期限(Statute of Limitation): 未申請は3年まで遡りファイルの必要あり。
またファイルしたときから3年は調査対象になりうる。
未申請により$5000以上の未納税が生じる場合は、期限は6年に延長。言い換えれば、6年まで遡って調査される。
(6)罰則規定
民事罰(Civil Penalty)
・正確な内容での未申請を行わない場合:一年につきUS$10,000 まで。
・IRSからの通知を受領してから30日以内に申告しない場合は30日ごとに$10,000の罰金が積まれます。
・最悪の場合、最高$60,000まで罰金、さらに刑事罰が課される可能性があります
・未申請口座からの収入があった場合は、その収入への課税プラス課税額の40%のペナルティー
・詐欺(Fraud)の目的による未申請で、未申請口座からの収入があった場合は、
その収入への課税プラス課税額の75%のペナルティー
刑事罰(Criminal Penalty)
・故意に開示・記録保持を行わなかった場合はTitle 26(税制)に基づき、刑事罰が課せられる。
FATCA | Foreign Account Tax Compliance
2010年3月にFATCA|Foreign Account Tax Compliance Act 外国口座税務コンプライアンス法が設定されました。 米国納税義務者による米国外の金融口座等を利用した租税回避を防ぐ目的で、米国が米国外の金融機関に対し、顧客が米国納税義務者であるかを確認すること等を求める米国の法律です。
日本では、2013年6月の日米関係官庁間の声明に基づき、2014年7月より日本の金融機関は確認手続きを開始しています。
米国外金融口座との取引、口座保持、生命保険契約の取引等をする際、顧客が所定
の米国納税義務者であるかを確認し、該当する場合には、米国内国歳入庁宛にご契約情報等の報告を行います。顧客が確認作業に応じない場合は、該当の口座の締結と継続ができなくなります。
世界の金融機関が躍起になっている理由は、確認作業を行わない口座からは30%を源泉徴収としてIRSに納めなければいけないからです。
Tax Nihongoのお客様にも、すでに日本の銀行から確認の通知が届いている方がいらっしゃいます。
以上、大事なことは、海外金融資産について、該当者は、開示報告を怠らないことです。