アメリカ税制解説
会計から確定申告への流れ
Workflow of accounting to tax filing
会計からTaxまで一貫したサービスをご依頼されているお客様へ会計から確定申告までの流れを説明いたします。
大きな流れ
一年を通して以下の流れとなります。
1.月毎・四半期ごと・一年ごとの会計を締める。
締めの時期は、会社の規模、経営観点から異なります。
規模が小さい場合は、四半期、半期ごとが望ましいですが、多くは一年ごとに締めています。
2.Income Statement/Balance SheetのReviewと修正
3.Management・OwnerのOKを頂く
4.Tax Filingを準備
5.Management/Ownerのサインをもらう
6.Tax Filingを行う
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Federal Taxの期限
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個人営業(Schedule C) 4月15日
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Partnership 3月15日
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C &S-Corporation 4月15日
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State:
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Sales Tax 毎月・期ごと・一年分 (各州の当局の判断による)
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Franchise Tax(テキサスのFranchise は5月15日です。)
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Mixed Beverage Gross Receipts Tax (TX)
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Mixed Beverage Sales Tax
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その他、州ごとに多岐に渡る。
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StateのTaxは一般的に州に登録した時点で州税務局より手紙が送られてきていますので、そちらをご覧ください。
7.延長申請
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日本と違い、アメリカの場合は延長申請が常時に行われています。
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会社の規模が大きくなれば、Transactionが増える為、会計の締めが1月から3月中に終わることは非常に稀です。
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1月から3月は各税務事務所・会計事務所では、法人・個人からのTax Filingの仕事が集中します。
また、お客様から上がってくる会計自体は、タックスファリングにそのまま適用できないものが殆どですので、修正・調整が多く行われる為です。 -
更に、税制改正がサインされるのは、多くはクリスマス直前であり、その適用の具体的方法がIRSでも定まらない場合があるため、改正を適用する場合は時間がかかることがあります。
例として、新しい書式が増える、または新しい書式がIRSで準備されていない、さらに、GILTI Taxなどのように、新しい複雑な計算式がはいってくる、などが挙げられます。 -
延長申請は6か月です。従って、アメリカの多くのビジネスが10月にTax Filingを終了することが多いです。
8.決算書
日本の法人は、事業規模にかかわらず、1年に1度の決算で、決算書と税務申告書を税務署などに提出することが義務付けられています。また、取引先、金融機関、株主に示すものです。アメリカではAnnual Reportと呼ばれるものです。
アメリカの上場していない企業は決算書(Financials)の税務署への提出は義務ではありません。確定申告が義務となっているだけです。こちらが日米の大きな違いかもしれません。
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では、上記項目一点一点を見て行きます。
1.月毎・四半期ごと・一年ごとの会計を締める ”Closing Book"
Bank Reconciliation =銀行勘定調整 (Bank Recとも言います。)
Journal Entry =項目記載
「締め」の期限はお客様の会社の規模、ご希望によってかわります。
中小企業さんであれば、最初は一年ごとの締めから始め、タックスのファイルまでこぎつけたあと、次は経営という観点から見ていくために必要であれば、四半期ごとの締めを行います。更には、完璧ではなくとも、月ごとの締めを行い、経営状態を細かくみていくこととなります。
日本語の「会計の締め」は、米国会計用語の一般呼称として、”Closing Book"と言われています。
弊社では通常QuickBooks Onlineを使って会計の管理をしております。
Bank Reconciliation
重要な作業として、月ごとの”Bank Reconciliation"(銀行記載との突合せ)があります。
Bank Recは銀行記載項目を一点一点QuickBooksに記載された項目(銀行とオンラインでつながり、ダウンロードされている)と照らし合わせて、正しい会計項目にあてがわれているか、二重に記載されていないか、欠損項目が無いか、を確認します。従って、会計の専門知識(とくにJournal Entry:項目記載)が必要とされる作業です。また、お客様のほうで間違って入力、経費・収入項目がある場合は、修正に時間がかかるものです。(一般に、中小企業の場合は、修正はかなりあります。)
Bank Recの最中には、会計担当と顧客様方のManagerとの間で質疑応答が繰り返されます。
Bank Recが終わっても、会計は終了しません。この時点では、60-70%の完成度となります。
2.Income Statement/Balance SheetをReviewと修正
Income Statement | Profit & Loss = 損益計算書
Balance Sheet = 貸借対照書
Financial Statement=財務諸表 =Income Statement + Balance Sheet+Statement of Cash flow
Bank Recが終わった時点で、ざっとIncome StatementとBalance Sheetを作ります。
Income Statementは"Profit & Loss" "P&L" "PL"と呼ばれることもあります。
一般的にIncome StatementとBalance Sheetを合わせて、”Financials"または、”Financial Statements"と呼ばれます。日本語ですと、財務諸表といいます。Statement of Cash Flowについては一番下に簡単に説明しています。
QuickBookOnlineでは、経営者の方がQBO(Quickbooks Online)のアクセスをお持ちですので、Financialはいつでも見ることができます。また、QBOでは、”Profit & Loss”を用語として使っています。
会計が終了した時点で、弊社会計担当から正式なReportという形ではなく、お客様へ「今、見れます。」という連絡をいたします。お客様のほうからQBOにアクセス頂きますと、記載項目がリンクできるようになっており、項目一点一点が見れるようになっています。
その連絡の際に、会計・税務・経営の観点から気が付いたことをコメントさせて頂きます。
経営者の方は、は会計の数字がざっくりと読める、という前提で進めていますが、会計書の見方、分析の仕方については、Trainingもいたしますので、ご心配なさらずに。
*英語と日本語の会計用語の違いはありますので、いずれ対照表を用意いたしますが、現時点では、アメリカの会社の経営であり、当局からの要請がある場合に備えて、日本語のみの表記はできません。(バイリンガル標記は漸次対応いたします)以上から、会計項目は、英語で標記せて頂いています。
アメリカの会計書の見方は、日本もGAAP(Generally Accepted Accounting Principles)を適用されていると思いますので、ほぼ同じだと思います。(ヨーロッパ型とは違うかもしれません。)会計担当の方は並び方や、数字からだいたいお分かりになると思います。
大きく違うところは、Depreciation (減価償却)Amortization が主ではないかと思います。
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不動産業者さんですと、日本国における2019年末の税制大網により、2021年から不動産の原価償却に大きな変更があります。また、日本の不動産取得税はアメリカにはありません。
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レストラン等の業界ですと、米国の2017年末の税制改正により、減価償却が不利な方向に向かっている場合もあるため、開店年で、まだ利益が出ていない年に、設備投資をSection 179という特例で一気に償却してしまうか、それとも、39年の一律で、償却するかどうかの判断が難しくなる場合があります。
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国際関係の処理の書式も違うと思います。アメリカの会社・個人の方で、米国外に法人のオーナーシップがある場合は、近年かなり複雑になっており、追加の書式をファイルする必要があります。
3.Management・OwnerのOKを頂く
上記、Financialsに於いて、質疑応答、変更、訂正の後に、Owner様の承認を頂く。
E-mailでの連絡で終わることが殆どです。
4.Tax Filingを準備
会計書(Financials)からの数字をTax Softwareに入れて行きますが、そっくりそのまま使えるわけではありません。例えば減価償却はStraight Line (単純な耐用年数割り)ではなく、資産によって、税制に基づいて減価償却経費を適用いたします。
その時々の税制、税制改正、損益額、利益額を見ながら最適な税制項目を使用すると同時に、売り上げ見通しなど、将来の事業計画のも加味しながら、進めてまいります。Case Studyもここで行う場合もあり、最終判断はお客様に選択をしていただきます。
5.Management/Ownerのサインをもらう
準備されたTaxの書類をお客様にUploadし、タックスファリングの用紙にサインを頂く。
この書類がサインされない限り、税制により、弊社ではE-Fileができません。
6.Tax Filingを行う
多くは、E-Filingとなります。書面でのファイルもありますが、特別な場合によります。
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実は、Financialsには、Statement of Cash Flowと言う書類もあります。会計がCash Basisではなく、Accrual Basis(発生主義会計)の場合に必要になる書類です。
Accrual Basisですと、例えばセールス担当が頑張って契約を沢山取ってきた場合で、支払いが90日後、という場合、売り上げの計上は出来ますが、実際のCashが入ってこない為、お給料などの日々の経費が支払えない、という事態に陥ることもあります。更には、実質がないのに、所得税も納税しなければならない、という事態もおこります。Cashの流れ(Flow)が十分にあるかどうかは、企業の存続にも関わることですので、Statement of Cash Flowも重要なFinancialsの一つとなります。
更には、企業自体を売却する、という事態となると、EBITAを作成する必要もでてきます。EBITAについてはここでは割愛いたしますが、Financials会計書、といっても色々あることをここでは述べさせていただくに留めます。